Citations:侍る

Japanese citations of 侍る

1891, 巌谷小波, こがね丸:

かくては大切なるこの尻尾も、老人の襟巻にさへ成らねば、いと口惜しく思ひ侍れど。
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1916, 森鴎外, 伊沢蘭軒:

（細川幽斎九州道の記に備後の津公儀御座所に参上して十八日朝｜鞆までこし侍るとあり。
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1917, 豊島与志雄, 生あらば:

皆と云ってもその病床に侍っていたのは、彼女の両親とそれから壮助とであった。
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1918, 長谷川時雨, 樋口一葉:

式部はおさなきより父為時がをしへ兄もありしかば、人のいもうととしてかずかずにおさゆる所もありたりけんいはゞ富家に生れたる娘のすなほにそだちて、そのほどほどの人妻に成りたるものとやいはまし――仮初の筆すさび成りける枕の草紙をひもとき侍るに、うはべは花｜紅葉のうるはしげなることも二度三度見もてゆくに哀れに淋しき気ぞ此中にもこもり侍る、源氏物がたりを千古の名物とたゝゆるはその時その人のうちあひてつひにさるものゝ出来にけん、少納言に式部の才なしといふべからず、式部が徳は少納言にまさりたる事もとよりなれど、さりとて少納言をおとしめるはあやまれり、式部は天つちのいとしごにて、少納言は霜ふる野辺にすて子の身の上成るべし、あはれなるは此君やといひしに、人々あざ笑ひぬ。
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1921, 内藤湖南, 應仁の亂に就て:

昔より天下の亂るゝことは侍れど、足輕といふことは舊記などにもしるさゞる名目也。
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1922, 大町桂月, 月の隅田川:

酒と月とあれば十分なりと、早くあきらめしが、妹は舟に醉はず、侍らせむといふ。
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1926, 折口信夫, はちまきの話:

天皇は神であると同時に、神主でもあるのだから、天子の配膳に仕へ、或は枕席に侍ることもあつた。
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1926, 田中貢太郎, 日本天変地異記:

斉衡三年三月八日の大和地方もひどかったと見えて、「方丈記」にも「むかし斉衡の比かとよ、大地震ふりて、東大寺の仏のみぐし落ちなどして、いみじきことども侍りけれ」と奈良の大仏の頭の落ちたことを記載してある。
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1926, 穂積陳重, 法窓夜話:

またその櫃には小さい孔を穿けて、空気の流通を自由にし、しばしばグローチゥスをこれに入れて試験を行い、それからひたすら、好機会の到来を侍っておった。
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1928, 牧野信一, 小川の流れ:

娘時代の千代紙細工のやうな姿から次第に離れて、分別を持つた、身に就いたおしやれを事としてゐる凡ての好みが、漸く自身の人柄に沁み透つたかの如うにしつくりとして来て、彼は、事毎に、無言の彼女の姿を眺める時に、ふつと、己れが主になつて好ましい美妓を侍らし、得も云へぬ爽々しい陶酔を購ふてゐるかのやうな涼しさに打たれる事があつた。
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1928, 牧野信一, 村のストア派:

彼自身は知らなかつたが、見ると自分の名前の下に自分の判が捺してある証文を突きつけて有無なく此処の住家を立ちのかすことを強ひてゐる株屋の手代が左右に芸妓を侍らせた自動車を飛して行つた。
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1929, 牧野信一, 熱い風:

多勢の酌婦を侍らせて、おそろしく威張つた鷹揚なふところ手で脇側に凭りかゝりながら、悠長な絃歌をきいて、うつら／＼と盃を傾けてゐるのも、思へば、忘れ得ぬこの世の歓楽だ。
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1929, 豊島与志雄, 傷痕の背景:

賢明な田代夫人は、早めに形式的に飯を出してしまうと、後の酒宴からは席をさけて、女中たちをも侍らせなかった。
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1929, 薄田泣菫, 艸木虫魚:

年月をふるといへども、こと訪ふ人もなく、安閑の境界は却つて楽を招き、富貴を願はず、我が惑はぬ年をこそ、秋の夜の長きに老の寝覚のつれづれに思ひ出してしるし侍る。
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1935, 夢野久作, ドグラ・マグラ:

あるじの歎き一方ならず、遂に狂ほしき心地と相成り候ひしを、亡き夫人の妹くれがし氏、いろ／＼に介抱し侍りしが力及ばず、遂に夫人と同じ道に入り候ひぬ。
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1939, 折口信夫, 死者の書:

とぶとりの　飛鳥の都に、日のみ子樣のおそば近く侍る尊いおん方。
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1940, 坂口安吾, 風人録:

彼は四五人の御婦人を周囲に侍らせ、談論風発、間断なく喋つてゐる。
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1942, 齋藤茂吉, 愛國百人一首評釋:

なほ此歌は新勅撰集に『ひとり懷を述べ侍りける歌』として載り、また増鏡にも載つた。
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1943, 正岡容, 小説　圓朝:

はや紅白梅活けた大花瓶まん中に、お供え祝った床の間ちかく、芸者幇間を侍らしてドデンとおさまっていた三十八、九のでっぷり立派やかな金太郎武蔵の主人はじめ、通人らしいその朋輩たちは、いずれも奇抜なこの圓朝のいでたちにアッと目を奪われてしまった。
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1944, 水野葉舟, 言文一致:

日本語でも、侍る的のものは已に一生涯の役目を終つたものであるから使はない。
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1946, 豊島与志雄, 波多野邸:

未亡人房江は脳貧血の気味で寝ていたが、自分の代りに、魚住千枝子を席に侍らして、秘蔵のコーヒーとウイスキーを出させた。
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1947, 坂口安吾, 道鏡:

天皇はその最も側近に侍る仲麿が、最も親しい男であるといふだけで、仲麿を見ると、それだけで、とろけるやうに愉しかつた。
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1947, 折口信夫, 日本文学の発生:

列座の人々が、宮廷に侍る皇族・官吏などの場合と、地方の旧族の代表者を意味する大社の神職――神主・祝部――であることとの区別があるだけである。
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1947, 風巻景次郎, 中世の文学伝統:

詞花集は殊に様はよく見えはべるを、余りにをかしき様の振りにて、ざれ歌ざまの多く侍るなり。
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1948, 折口信夫, 文學に於ける虚構:

曾良にかたれば、書とゞめ侍る。
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1948, 豊島与志雄, 自由人:

ところが、二次会の料理屋では、顔が、利いてるらしいし、社長をさしおいて何かと指図がましく振舞い、女中風には装ってるがそれと分る芸妓をも四人ほど侍らした。
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1948, 豊島与志雄, ヘヤーピン一本:

別な存在のようで、或は人形のようで、ただ席に侍ってるだけだ。
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1952, 正岡容, 艶色落語講談鑑賞:

そういえば、永らく病臥していた柳家権太楼が、かつては文楽座で名人越路太夫の門人だったとやらで義太夫が自慢、一夜お客と大塚へ来て酔余、義太夫を語ったら、侍った芸者がじつによく弾く。
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1953, 坂口安吾, 梟雄:

オレのようなのを用人に召抱えて側近に侍らせておけば、その主人が一国はおろか何国の大守になっても、諸侯との交渉談判儀礼通商に困るということはない。
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1953, 佐藤垢石, 『七面鳥』と『忘れ褌』:

『おのれらは心しても、子の生まれ侍るには困じぬれど、上にはそれに事かわりて、御子生まれさせ給うべきも木っ根この座さねば、如何にかはせん。
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1954, 坂口安吾, 曾我の暴れん坊:

呼ばれれば客の席へも出なければならず、特別の上客にはその枕席にも侍らなければならない。
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1954, 坂口安吾, お奈良さま:

というのは、檀家全部が彼のお奈良を快く認めてくれたわけではないから、告別式やお通夜に大音の発生を心痛せられるような檀家もあって、そのような時には導師たる自分の後に必要以上に多人数の従僧を何列かに侍らせてトーチカをつくって防音する。
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