Citations:落胆

Japanese citations of 落胆

1887, 二葉亭四迷, 浮雲:

それは勿論彼娘だッて口へ出してこそ言わないが何んでも来年の春を楽しみにしているらしいから、今｜唐突に免職になッたと聞いたら定めて落胆するだろう。
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1902, 正岡子規, 病牀六尺:

失望といはうか、落胆といはうか、余は頻りに煩悶を始めた。
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1906, 泉鏡花, 式部小路:

と落胆したようにいったが、これは女房には分らなかった――蔵人のことである。
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1907, 押川春浪, 月世界競争探検:

「しかしまだそう落胆するには及ばない。
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1908, 伊藤左千夫, 春の潮:

はたして省作は深田の養子になり、おとよも何の事なく帰ってきたから、やっぱり人の悪口が多いのだと思うていたところ、この上もない良縁と思う今度の縁談につき、意外にもおとよが強固に剛情な態度を示し、それも省作との関係によると見てとった父は、自分の希望と自分の仕合せとが、根柢より破壊せられたごとく、落胆と憤懣と慚愧と一時に胸に湧き返った。
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1909, 泉鏡太郎, 神鑿:

然うだ、死んだと言へば、生死の分らなかつた、お前の無事な顔を見た嬉しさに、張詰めた気が弛んで落胆して、其つ切に成つたんだ。
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1910, 夏目漱石, 門:

退儀な身体を無理に動かす割に、頭の中は少しも動いてくれないので、また落胆りして、ついには取り放しの夜具の下へ潜り込んで、人の世を遠ざけるように、眼を堅く閉ってしまう事もあった。
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1911, 新渡戸稲造, ソクラテス:

また、思う事がならず、失望｜落胆に沈んでいる時にも、もしこれがソクラテス翁さんであったら、この一刹那を如何に処するであろう、と振返って、静に焦立つ精神を鎮めてみると、ある雄々しい本然の心が腹の底から声を出すのである。
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1912, 関寛, 関牧塲創業記事:

とて片山夫婦は勿論高橋富藏も共に大に苦慮して、何れも落胆の極に至り、或は各自决する事ありて一身を退かんと欲するが如く、且つ精神沈欝して共に惨憺たり。
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1916, 森鴎外, 渋江抽斎:

久次郎はひどく落胆したが、翌年病に罹って死んだ。
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1917, 高浜虚子, 漱石氏と私:

前のと伯仲の間だと仰せられては落胆します。
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1918, 葛西善蔵, 遁走:

私は少し落胆してとにかく笹川のところへ行って様子を聞いてみようと思って、郊外行きの電車に乗った。
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1919, 菊池寛, ある恋の話:

しかも、私はその懸命必死な恋に、破れた訳でありますから、その当座はかように落胆失望致したのも、無理はございません。
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1921, 牧野信一, 坂道の孤独参昧:

「毎日学校に行つてゐる？　此頃何時始まりさ？」落胆さは強烈なだけにそれはそれだけ遠く心の一隅に圧縮せられて石の如くに堅くなつた儘転がりもせずに、十重二十重の気軽さに覆はれた。
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1923, 甲賀三郎, 真珠塔の秘密:

折角｜手繰った糸が又この異様な新な買手の為めにプッつりと切り離たれたのは、友にとって打撃に相違なかったが、左程落胆している模様も見えなかった。
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1924, 小酒井不木, 紅色ダイヤ:

とさも落胆したように申しました。
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1925, 田山録弥, 一室:

やり手らしい五十先の肥つた丈の低い女が出て来て、何か頻りに李と話してゐたが、余り好い客でないといふことがわかると、いくらか落胆したといふやうな様子で、迎へ入れるには入れても、余りちやほやしなかつた。
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1926, 葉山嘉樹, 海に生くる人々:

彼は人に落胆させまいとして、いつでも骨を折る気のいい正直者であった。
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1927, 牧逸馬, 舞馬:

長火鉢のことはそれでよかったが、もう三年にもなるのに、峰吉の落胆にまで子供がなかった。
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1928, 国枝史郎, 娘煙術師:

月光の充ちている往来の上へ、で、しょんぼりと残ったのは、落胆をした金兵衛一人であった。
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1930, 小出楢重, 油絵新技法:

ここに一年や二年は如何にあのアッパッパと仁丹を表現すべきかについて考えた結果、落胆と、失望と、不勉強と、生活難はどしどしと攻めよせてくる。
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1931, 浜尾四郎, 殺人鬼:

彼たるもの、失望落胆せざるを得ないじやないか。
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1932, 佐左木俊郎, 馬:

伝平は酷く落胆した。
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1933, 岡本かの子, ドーヴィル物語:

突然、イベットに永訣しなければならなくなった世にも憐れな落胆者小田島は、また同時に世にも羞しい果報者となってホテルへ帰った。
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1934, 海野十三, 恐怖の口笛:

これには痣蟹｜就縛に大悦びだった雁金検事や大江山捜査課長をはじめ検察官一行は、網の中の大魚を逃がしたように落胆した。
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1935, 岡本綺堂, 明治劇談　ランプの下にて:

その矢さきに彼をうしなったので、家橘は取りわけて落胆しているらしかった。
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1936, 和辻哲郎, 能面の様式:

そうして単にそれが無いというのみでなく、さらに反伎楽面的なものを見いだして落胆したのであった。
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1937, 徳田秋声, のらもの:

晴代は落胆してしまつたが、遊ぶ金だけは能く拵へるものだと感心した。
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1938, 島崎藤村, 新生:

引返して来て見ると、余計に彼は落胆した。
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1939, 桐生悠々, 正義の国と人生:

でも、彼は落胆しないで何処かに「正義の国」があることを信じて、そこへ行こうとしていた。
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1940, 小栗虫太郎, 「太平洋漏水孔」漂流記:

私はメモを置いて、落胆したように彼をみた。
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1941, 宮本百合子, 杉子:

すれちがう一人一人が杉子の胸に大きくひろがって感じられる落胆に靴音を反響させて行くような思いがした。
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1946, 坂口安吾, 続戦争と一人の女:

私たちの住む街は私たちの一町四方ほどの三ツの隣組を残して一里四方の焼野原になつたが、もうこの街が燃えることがないと分ると、私は何か落胆を感じた。
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1950, 久生十蘭, 無月物語:

白女の落胆はたいへんなもので、朝霞をつかまえては嘆きに嘆いた。
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1951, 豊島与志雄, 春盲:

失意の極、絶望の極、落胆の極、そんなものではなく唯あらゆる意慾の停止、あらゆる思考の停止だった。
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1952, 正岡容, わが寄席青春録:

取り残されたこの私の、いうようなき失望よ、落胆よ、また悲嘆よ。
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1956, 小金井喜美子, 鴎外の思い出:

夢想と現実との違うのが世の習いですが、希望の大きかっただけに、母のその後の落胆の度も強かったのでしょう。
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